あまうた



僕には気づかなくっていいから、
できるだけここで突っ立っていたい
雨にぬれたって良い
じめじめした壁と壁に押されて
湿気と知らない臭気にまみれて
実は雨の音以外の
親しく優しい破壊音が
くうき以上にそこら中へしきつめていて、
僕の音なんてまだ雨にも勝てないのに
僕の声なんてもうここへはいなくなるのに
明日になったら、またさよならだね
次会えるのはいつになるのかしら
僕が決めることだけど
きっと雨の日以外はだめだよ
汚らわしいと君が罵ってくれるまでは


「はい傘、僕がわざわざ持ってきてあげたの」
「なろうか、」


君は一体何が聞こえてたの
傘を持ってきた、って僕は言ったのよ


「そろそろ、地面の上へ立つのはやめて、
 寒気がするくらい嫌いで怖いあのこに、ね」


あめとしゃべってるとかだったら、
僕は大いに笑ってあげるよ
そうそう、さっきから背後にいる
あの大きな虫がとってもうっとうしいから
早くその手で殺してしまって。
ひかりの周りをずうずうしくも
飛び回って良いのは僕だけさ。


彼は下を向いて、帰ろうか、と
残念そうに僕に行った
傘をひきずっていた
蠅の王のラーフのような
あ、
あ、
あ、あ
あ、
あ、あああ
僕はできるだけ彼のいうことをきくようにした
傘を差し出してくれた君、
僕じゃない。
あめとたわむれていたのも僕じゃない


「さあ、そろそろ感覚がつかめてきただろうか?」








おわり












持って帰っていいんですか、いいんですね、持って帰りますよ
なノリでテイクアウト。
深雪様大好きです。一生大事にします。