人形遊戯び





狗が皮肉を込めて云った。

「スマイルって、ユーリと他の人とで態度が違うっスね」

僕は生真面目に答えた。

「当たり前でしょう」

狗は引き下がる事無く会話を続ける。

「何故?」

仕方無いので僕は呼んでいた詩集を閉じる。

「何故って君、そんな事も分からないのかい?」
「分からないから聴いてるんス」
「あっそ」

閉じた詩集を狗の頭に狙いを定めて抛る。
おぉ、見事命中ストライク。

「いっ・・・・・・・何・・・・」
「ヒッヒッヒ。たまには詩でも読んで
人の心理を理解してごらんなさいな」
「・・・・・・・・・」

狗は誠に恨みがましい目で僕をねめつけた。

「あのねぇ、僕はユーリが全てなの。
ユーリ以外なんて如何でも良いこと此の上無いの。
だから其の如何でもいい人達にユーリと同じ様な態度取る必要なんて微塵も無いの。
お分かり?若人」
「・・・・・・じゃあ、俺も如何でもいい人達の一人って訳っスか」
「えー何、君拗ねてるの?きゃー、若いねぇ。
うん、まぁ、云ってることは間違ってないけど。
僕にとって君はただのバンドメンバー或いは狗ってだけだからさー」

ニヤリ、と敢えて厭らしい笑みを浮かべてやる。

「僕にはユーリしかなくて、僕はユーリしか要らないんだよ」
「っ・・・・・・・・」

狗は少し怯んだようで、咽を詰まらせたような様子を見せた。
嗚呼、良い気味だ、と思う自分が可笑しくて、余計ににやにやする。

「・・・・・そんなに云うこと、無いと思うっス」
「へぇ、なぁに、君は僕が人非人だといいたいの?」
「そういう訳じゃ・・・・」
「あはっ。正直だねぇ」

ソファから腰を上げようとすると、狗が僕の頭の上を本で抑えるように叩いた。
先程僕が投げつけた詩集だった。

「何するのさ」
「返します。俺詩集なんて読まねぇっスから」
「読まず嫌いは良くないよ」
「一度読んで嫌いになったんで」
「さいですか」

詩集を片手で受け取り、今度こそ席を立つ。

「それでは、美味しいお茶とお噺を有難う。
またの機会を秘かに楽しみにしているよ」
「・・・其れは如何も」

煮え切らなさ気な顔で、些かの皮肉と共に狗は答えた。

「・・・・・・・ま、精々僕の機嫌でも取ってユーリの座を奪うんだね」
「・・・・・・・・・・・」
「努力する人は嫌いじゃないよ。うん」
「・・・・・・・」
「とはいえ、もし君がユーリの右に出たところで、
君は彼のオルタナティヴでしかないのだけれど」
「・・・スマイル」
「何かな?」
「・・・・・・愛しています、と云ったらどうします?」
「偉く突拍子も無い噺だね。そして愚問だね。そんなの決まりきったことじゃないか」

僕は少しだけニヤニヤ笑いを引っ込めて、
屈託の無い笑いを見せた。
序ながらオプションでぶりっこなアニメ声と仕草まで付けて。


「ボクもだよ、アッシュ君っ」


一瞬呆けたような情けない顔になる狗。
元々情けない顔してるけど。

「・・・・なんてね。自惚れるんじゃないよ若人。
云ったでしょう、僕にはユーリしか要らないんだよ」

お馬鹿さん、と付け足して再び厭らしい顔で嘲笑うと、
狗の顔も見ずに、僕は部屋を出た。



fin.