そしてだれもいなくなった
吸血鬼は眠った
今度はいつ起きるのかもわからないし、或いは地球が塵と化すまで眠り続けるのかもしれない
狗は死んだ
当然のように、自然の摂理にしたがって、石の墓標と薔薇の木を立てられて、庭の奥深くに埋められた
幽霊は居た
森の中の屋敷に自ら縛られ囚われた儘、何を待っているのかも分からなくなりながらも存在し続けた
人形たちは土に還り、再度命を与えられ、主の傍らにい続けた
宇宙の歩行者もまた、生き続けた
星と星の間の闇色に、想い人を描きながら歩き続けた
神様はただ見ていた
彼が棺桶に横たわる瞬間を、
彼が看取られる瞬間を、
彼が仮面の下で泣く瞬間を、
彼が宙に足を踏み出して離れていく瞬間を
ただ、傍観していた
僕は、何処だろう
彼の胃袋の中に納まっているのかも知れないし、
彼の隣に同じ様に埋葬されたのかも知れないし、
人形になってお茶を嗜んでいるのかも知れないし、
星屑になったのかも知れないし、
或いは元々、何処にも居なかったのかも知れない
大丈夫、何時とて繋がっているのだから、其の時が来ればまた、逢えるだろう
然様なら、またね
end.