笑う
スマイルは、よく笑う。
変な風に笑う。
ヒヒヒ、
と肩を揺らして、口を横に開いて笑う。
人によっては不快に思うのではないかと思うほど、変に笑う。
でも、彼は其れが素なので、どうしようもないだろう。
たまに普通に笑うといっても、ニヤァ、と
時計兎と少女の不思議童話に出てくる縞柄猫のように笑うのだ。
(変なヤツ・・・)
そう思いながら、今まさに隣でうたた寝をしているスマイルを横目で見やる。
普段は笑ってばかりの奴でも、流石に寝ているときは笑わないようで、
小さな寝息を零しながら、ソファの背もたれに体重を預けていた。
寝顔を見ていて、無意識に「可愛いな」と思った。
そして、その思考に制止をかける。
「可愛い」
とは何だろう。
果たして如何いうものを「可愛い」と称するのだろうか。
スマイルは「可愛い」のだろうか。
・・・分からなかった。
そういえば少し前、彼に
「もう少し感情というものを知るべきだ」と云われた記憶がある。
(感情か・・・・)
そんなもの生きるものとして最低限持っていれば良いと思うのだが。
彼はそれは気に召さないようだった。
これでもスマイルに会う前よりは、其れを知った気がするのだけれど。
手を伸ばして、彼の蒼く細い髪に触れた。
前髪を少し横にやると、何の夢を見ているのか、
少しにやけた表情が見えた。
(・・・変なものを見た)
あまり人の寝顔というものは見たことが無かったので、
笑いながら眠るその姿に少し戸惑いを覚える。
と、その時。
「げへへへへ・・・・」
「・・・・?」
奇妙な笑い声が聞こえた。
思わず彼に伸ばしていた手を引く。
何だこの笑い方は。
G子音から始まる笑い方なんてありなのか。
そもそも誰だこんな気色悪い笑い方したのは。
と、其処まで考えて、ふと気付く。
この部屋に居るのは自分とスマイルだけ。
さらに、笑い声が聞こえたのは至近距離。
因みに自分はそんな笑い方断じてしない。
つまり
「ぐへへ・・・・ギャンブラぁ〜」
(・・・・・・)
犯人見たり。
しかも今度はぐへへだった。
気持ち悪い笑い方するな。
鳥肌たったぞ。
初めて気色悪い笑い声を上げながら
眠る人を見た。
fin.