「恋と愛の違いって、何だと思う?」
最早大分慣れてしまった、彼の唐突な問いかけに
私は首を傾げる。
「何、と云われましても」
果たしてその問いに答えたとして、何か意味はあるのだろうか。
そもそも答えられもしないが。
返答を滞らせると、彼は私の意を悟ったように小さく微笑った。
「恋って云うのは、こう、お喋りしたりとか、
何処かへ一緒に出かけたりだとか
そういうことをするんだって」
「なるほど」
妙に納得出来てしまった。
それは、確かにいいえて妙。
要するに新婚或いは出来たてカップルみたいなものだろうか。
「では、もう一方は?」
促すと、彼は私のほうを見て、再度小さく微笑った。
「愛はね、地球時間にして15分以上、
黙って隣にいられることなんだって」
それで幸せなら、それが愛なのだと。
「確かに其れは、愛ですね」
「君もそう思う?」
「えぇ」
隣で、二人ただ何もせず、静かに時を過ごす。
それは、当たり前のようで、でもなかなか出来ないものである。
「恋と愛、ですか。
私たちは、どちらでしょうね」
「其れはもう、云うまでもないと思うんだけど」
「ふふ。そうですね」
こうやって、たった二人で、時折他愛もない話をしながら
静かに時を過ごすのは、至極幸せなもので。
其れをどう呼称したとしても、幸せなのに変わりはなかった。
fin.