呼吸困難







「―っ・・・・・」


呼吸を、忘れた。

否、呼吸の仕方を、忘れた。


(これはやばいなぁ)


本当はこんな呑気に構えている場合では無いのだけれど
それは無理矢理落ち着こうという僕の考えである。

とりあえず助けを求めようと、隣で何も知らずにのうのうと眠っている
吸血鬼を起こしにかかる。
だがしかし、かなりの低血圧である彼を短時間で起こすのは
極めて困難であろう。
そんなことしている間に酸欠で死んでしまう。


(うにーどうしよう)


考えている間にも酸素が行き渡らない体が悲鳴を上げる。
徐々に視界が霞んでいくのが分かる。
考えるどころか意識を保つのが精一杯になってきた。
もう、自分では解決できない状況にあるのかも知れない。


(このまま死んだりして)


ありえない話じゃないから怖い。
いやしかし、流石にこんな無様な死に方は出来るならば御免蒙りたい。
妖怪バンドベーシスト、原因不明の窒息死。

・・・・・絶対厭だ。

けれど、そんな僕の意思に反して全身酸欠状態な体は動きを鈍らせるばかりである。


(ユーリ助けてよー)


以心伝心だなんて一体誰が言ったのだろう。
この肝心な時でさえ、僕の心の叫びは彼に届くことは無い。


(あ、やばい)


意識が、白を通り越して無に変わっていくのが分かった。
このままいったら、どうなるのだろう。
矢張り、死ぬんだろうか。
まだ死にたくないのになぁ。
作りかけのお歌とか、来月来るであろうギャンブラーZ限定フィギュアとか色々あるのになぁ。

あれ、可笑しいな。
僕、ついこの間まで死にたがってなかったっけか。
何でだろう。
ユーリの所為かな。
ユーリに会ったから、色々生きるようになっちゃったのかな。
つまり会ってなけりゃ、こんなに必死こいて生きようとしなくてもよかった訳で。

でもまぁ、会っちゃったんだから、仕方ないか。


僕は未だに何故か機能している思考回路でそう考え、
微妙に残っている力で腕を動かし、彼のシャツを引っ張った。


(気づいてくれるかなぁ)


まぁ、例え気づいたところで、僕の呼吸困難を直せる確立が
100%な訳ではないから、此の際あまり期待しないほうがいいのだろうが。


(ユーリ、・・・・)


今度こそ、思考回路及び心肺機能その他諸々が、赤信号になった。

眼前が、ブラックアウトする。






































プツン












































































「―スマイル・・・・?」














next?